大人になると、自分の感情を言葉で説明することは、想像以上に難しくなります。不安や怒り、違和感があっても上手に伝えようとする意識や評価されることへの無意識の防衛が先に働き、本来の感情に触れる前に、思考で整理しようとしてしまう。これは多くの成人クライエントに共通して見られる傾向です。そのため本カウンセリングでは初期段階から過度な言語化を求めるのではなく、非言語的アプローチを併用しながら感情への安全なアクセスを支援しています。その一つがアールブリュット鑑賞を取り入れた芸術療法です。アールブリュットとは美術教育や技法、評価体系から距離を置き個人の内的衝動や感覚から生まれた表現を指します。日本では障害のある方が創作したアート作品を指す場合が多くあります。意味づけや解釈を前提とせず、上手下手や正誤の判断が介在しにくい点が特徴であり臨床においてはクライエントの防衛を刺激しにくい媒体として機能します。鑑賞という形を取ることで制作への抵抗感や技能不安を回避しながら、感情反応や身体感覚の変化を自然に引き出すことが可能になります。言葉になる前の違和感、理由の分からない引っかかり、説明できないけれど確かにある感覚。そうした内的体験を無理に整理するのではなく、まず「感じる」ことを許可するプロセスとしてアールブリュット鑑賞を非言語療法としてカウンセリングに組み込んでいます。その後、必要に応じて、言語的な振り返りや意味づけを行うことで、感情理解と自己認識を段階的に深めていきます。・話すことが苦手な方・感情が分からなくなっている方・トラウマ反応や防衛が強い方にとっても負荷の少ない導入的アプローチとして活用できる芸術療法です。